エピローグA 夜明け――『有給休暇』の結末
「さてと……ジェシス。わたしに、何か言うことは?」
船縁の脇に立ったソフィシエは、こちらを振り返りざま、そう訊いてきた。
「おまえに許してもらおうとは思ってねえよ」
ジェシスは短く言葉を返した。
「最高最悪に卑怯な答えを、どうもありがとう」
少女は、ニコリと微笑んだ。
とても愛らしいのに、刹那、目を合わせただけで、心臓が凍って砕けそうな心地になる最凶の笑顔――彼女の得意技のひとつだ。
ここは、定期船の後部甲板の上。
要するに、ジェシスたちは、ソフィシエが昨日乗って帰ろうと思っていた定期船に追いつき、途中乗船したのだった。
法外なスピードの小型船で追いかけてきて、港ではなく大海のど真んなかで乗船しようとする客など、常識では考えられない。
果たして受け容れてもらえるのかどうか、ジェシスは気を揉んだ。
しかし、案じる必要はなかった。雄虎が定期船に合図を送り、船長かそれに準ずる立場と見られる相手に軽く話をすると、あっさり乗せてもらえたのだ。
交渉とも呼べないような会話で話がついたことに、ジェシスは驚かされた。雄虎という老人は、天華において、存外大きな影響力を持っているのかもしれない。
そうして船に乗り込んだ後、二人には、きちんと休息の取れる船室があてがわれた。
案内されて部屋に入ったとき、ジェシスは疲労困憊していた。
一昨晩は十分に眠れず、次の朝から夕方まで天華観光をして、夜には天兵たちとの戦闘と黒龍との駆け引きを経験したのだから、当然と言えば当然である。
すぐにでも眠りたいところだったが、その前にソフィシエから『ちょっと話をしたい』と言われてしまった。何の話をしたいのかは予想できたので、彼はおとなしく少女の後に続いて甲板に出たのだ。
最凶の笑顔を前にして、ジェシスは弁解する気もなく、黙って立っていた。
とっくに真夜中を過ぎて、夜明けも近い今の時刻、自分たち二人以外に甲板に出ている船客はいない。
暁の静寂のなかで、ソフィシエは微笑みを顔に貼り付けたまま、口を開いた。
「わたしが何を許せないと思ってるか、あなた、本当にわかってるの?」
「俺たちを助けようとした春明を人質に取って、手首を傷つけて、その揚げ句に殺すとか何とか言っておまえを脅したことだろ?」
敢えて具体的に、ジェシスは答えた。
「もちろん、それもあるけど……。わたしが許せない最大のことは、それじゃないのよ。わからない?」
ジェシスは、しばし黙考したが、それほど迷わずに解答を導き出した。
「俺が、おまえの身代わりになろうとしたこと、だな」
「……大正解」
少女の恐ろしい笑顔の迫力が、さらに二割ほど増した。
「自分を犠牲にして助けてもらっても、わたしはちっとも嬉しくないって……知ってて、あなたやったでしょ?」
「ああ。あれは紛れもなく俺のエゴだ。だから、許してもらおうとは……」
「どうして! どうしてなのよ!! あなたは、どうしてそうなの!?」
ソフィシエは表情を一変させ、怒気も露に叫んだ。
「あなたには、わたしを恨むだけの理由こそあれど、そこまでわたしを大事にする理由はないはずよ。そう……あなたには、さぞ梟武の気持ちがよく理解できたはず! 彼と一緒になってわたしに報復しようとするほうが、今夜あなたが現実にとった行動よりも、まだ受け容れやすいくらいだわ」
早口で、掠れたような声音は、この前の晩、飯店の部屋で聞いたものと同質だった。
思い詰めた心が、そのまま反映された、苦悶の叫び。
「いくらわたしがクレバーくんのパートナーだからって、必要以上に気を遣う必要なんかない。あなたが優しいのは知ってるけど、無理してまで優しくしないで!」
「おいソフィシエ。てめぇ、それ以上ほざいたら、キレるぞ」
ジェシスは、本気で低く恫喝した。
「春明も言ったが、あんまり『どうして』って連発するのは、失礼もいいとこだ。おまえは、俺が仲間として……長年付き合いのある友人として、おまえ個人をごく普通に大事に思う気持ちを疑うんだな?」
「え……」
ソフィシエは面食らったように目を瞬かせた。
「確かに、おまえはクレバーからの預かりもんだが、それだけの理由で世話焼いてるわけじゃねえ。ふざけんなよ。四年前のあの日から、俺がずっと無理しておまえと接してきたとでも思ってんのかよ!?」
ジェシスは、激しい憤りに任せて叫ぶ。
「もう忘れちまえ! 昔の嫌なことは、さっさと全部! 綺麗さっぱり!」
――やっと言えた。たぶん、もっと早く言ってやるべきだった言葉。
「反省するのは勝手だし、悪いことじゃねえが、それぞれにつき一回で十分だ。溜め込むと身体に毒だぞ。俺みたいになっちまったら、どうする気だよ……」
最後は口調を鎮めて、短く諭した。
すると、なぜかソフィシエは、微妙に顔を強張らせた。そこはかとなく気まずげだ。
「そうね……困るわね、あなたみたいになっちゃったら。だけど、あなたをそんな困った状況に追い込んだのは、わたし、なのよ……」
(……!? しまった!!)
ジェシスは即座に気づいた。またしても失言だ。
(うう……俺は、どうしてこう、会話の運びが下手くそなんだろうな……)
心中で密かに嘆いていると、ソフィシエが小さく笑い声を漏らした。
「……四年前、わたしとの模擬戦闘時に負傷したことによって、あなたの左脚には後遺症が残った。そのせいで一般の白兵戦要員から退くことを余儀なくされて、あなたはやむを得ず銃を手に取り……暗殺者になった。それ以来、あなたは一度も標的の抹消に失敗したことがない。だから、『パーフェクト・イレイザー』……」
そう言うと、少女の表情は、呆れ顔へと変化した。
「直接情報戦において、あそこまで惜しげもなく真実を垂れ流す影の兵士は、世界広しといえどもあなたくらいよ。あなたは経験が少ないから、慣れてないのは仕方ないけど……基本理論を完全無視するのはどうかと思うわ。ひとつの嘘さえ吐かずに自分の素性を敵に教えるなんて……『馬鹿正直』っていうのは、あなたのためにあるような言葉ね」
揶揄めかした謗りに対し、ジェシスは言い返すことを断念して、頷く。
「……そうだな。だが、あれが俺にとっての限界だ。俺は嘘も演技も下手だから、まともに交渉するには、本当のことを言うしかないと思った。虚と実とを織り交ぜて相手を翻弄
するなんて器用な真似は、俺には無理なんだよ」
「ハイペリオンの駆け引きでは、最強なのにね……」
「カードゲームとは全然違うだろ。盤の大きさも種類もな。直接情報戦が不得手な俺は、ちょうど狙撃手に向いてるってわけだ」
ジェシスは、結論めいた台詞を口にして、話をまとめようとした。
さっきの失言から続く会話の流れを、どうにかして早く打ち切りたかったのだ。
しかし――
「向いてる……? よく言うわ!」
目の前にいる少女は、拙いごまかしが通用するような甘い相手ではなかった。
「仕事を一件片付けるたびに、服用する睡眠薬や精神安定剤の量が増えていく人の、どこが暗殺者に向いてるっていうのよ!?」
一気に顔つきを険しくして、噛み付いてくる。ジェシスの台詞は、むしろ逆効果だったようだ。
「あー、頼むから、いちいち口に出して言わないでくれ。いくら明け方だからって、誰か甲板に来ないとも限らねえし、誰も聞いてなくたって格好悪いだろ……」
堪らず額に手を当て、うつむいて懇願する。
「仲間内どころか、国外に来てまで『影の兵士に向いてない』って評価されたくせに、暗殺者が天職だとでも言うつもり? 笑わせないで……」
止めとばかりに、重ねて辛辣な言葉を発した後――少女は、ふっと吐息を漏らした。
「……だけど今回は、わたしも言われちゃったのよね。『影の兵士失格』って……。本当にそうだわ。あらゆる面で、まだまだ未熟。やっぱり、もっと……もっと強くならなきゃ」
「……!」
ジェシスは、ギョッとしてソフィシエを見た。
彼女の呟きを耳にして、何もかもが振り出しに――一昨晩の状態に戻ってしまったかのような感覚に襲われたのだ。
(俺……結局のところ、任務失敗、か?)
そう考えた瞬間、ジェシスは不意に立ち眩みがして、木の甲板に膝を突いた。
肉体の憔悴と、それより激しい精神の消耗――『疲れ』という名の毒が、急激に身体に回って、四肢の筋肉を弛緩させてしまったようだ。
「ジェシス!?」
少女が駆け寄ってきて、傍にしゃがみ込んだ。
「……おまえ、帰ったらまた、訓練漬けの毎日を送るつもりなのか?」
虚脱感と共に尋ねると、意外なことに、相手は首を横に振った。
「いいえ、違うの……。わたし、もう思い詰めたりなんかしない。訓練はするけど、周りの人に無茶だと思われるようなやり方は控えるわ。いろいろ心配かけて、ごめんなさい」
ソフィシエは、落ち着いた態度で、はっきりと言った。
「それから……さっき変な非難を口走ったことも、謝らせて。あなたの心は、全く過去に囚われていないって……あなたは単なる責任感によってだけじゃなく、仮にも相棒としてわたしを守ろうとしてくれたって、よくわかったから」
「ソフィシエ……」
沈みかけていたジェシスの気分は、一転して高揚した。自分の苦労が報われたという満足感によって、精神的な疲労が癒されていく。
「ただし、『自分は狙撃手に適任だ』なんて言い分は、絶対に認めないわよ。私の負わせた怪我が、あなたを不本意な道に進ませたという事実だけは、決して変わらない」
「………………………………」
緩んだ心に不意打ちを食らって、ジェシスは沈黙した。
「ほんとに、不思議なのよね。春明といい、あなたといい。『言うな』って言われたって、どうしても言いたくなるわ。『どうして』って……」
ソフィシエは、少し切なげに言った。
「あなたと、春明と、梟武……三人とも、わたしの手で消えない傷を刻まれてる。なのにどうして、こうも感情が異なるのか……わかるようで、わからないの。わたしとしては、梟武の反応が一番自然だと思えるんだけど」
それを聞いて、ジェシスは、黒龍に捕われていたときの少女の態度を思い返した。
復讐者である男を『いやな顔』などと呼んだ彼女だが、それは男が春明を泣かせたことに対して怒ったからであって、自分への逆恨みに憤ったからではない。
『逆恨みだろうが何だろうが、恨みは恨みよ。正当じゃなくたって、復讐の確かな理由として存在してるわ』
そんな台詞からしても、ソフィシエは黒龍の復讐を、むしろ当たり前のものとして受け止めていた節がある。
「このわたしを恨んで、殺したいと思ってる相手は、世界中にごまんといるはずよ。影の戦場にも、その外にもね。そして、たぶん……わたしやクレバーくんのこと、恨みがなくても殺そうとする人間は、もっと多い……」
少女は、すっと目を細め、針のような視線をジェシスに突き刺した。
「いい? ジェシス。今更繰り返すまでもないけど、有り体に言って、わたしたちはいつ死んでもおかしくない身の上よ。そんなわたしたちはね、危険にさらされたとき、ろくに躊躇いもせず身代わりになろうとするような人の傍にはいられないの!」
どこまでも冷厳に、あらゆる反論を封じるような強さで、告げる。
「この機会に、改めて言っておくわ。わたしたちを友人と思ってくれるなら、わたしたちのために命を捨てないで! もし、もう一度、今夜みたいなことが起きたら……クレバーくん共々、あなたとは絶交よ!」
「クレバー共々、か……。そりゃきついな」
ジェシスは、即時に湧いた心情を、そのまま吐露した。
「……クレバーくんも、ずっと前だけど、わたしに漏らしたことがあるのよ。『僕たちは、ジェスの傍にいちゃいけないんじゃないか』って……」
「なっ……! それ、いつのことだよ?」
未知の情報を伝えられて、わずかながら動転する。
「わたしたちを狙った『クラウ狩り』の眉間を、あなたが一発の銃弾で撃ち抜いた、あのときのこと。あなたはまだ、銃を所持するようになってから日が浅くて……仕事でも、人を殺めた経験はわずかしかなかったのに、わたしたちを守るために発砲した。あなたが薬を日常的に服用するようになったのも、確か、あの頃からだったわね」
ソフィシエは、容赦のない的確さで指摘した。どこか責めるような口調だ。
それは、ジェシスが暗殺者に転向した件に関して、彼女がまだ、自分自身を責めているという証拠でもあった。
(どうやったら、真の意味でこいつを解放してやれるんだ……?)
無茶は止めると宣言し、スランプからは脱したように見える少女だが、ジェシスは個人的にすっきりしなかった。
暗殺者であるジェシスの普段の主な仕事は、サーヴェクト国内の武器密売人の抹消だ。
禁じられた銃器や爆薬の対外取引で、私腹を肥やそうと企む不届きな輩は、国内に大勢いる。国王への忠誠と国民たちの結束が国家の繁栄を支えていると謳われるサーヴェクトも、やはりそうした内憂を抱えているのだ。
摘発されて再三の警告や処罰を受けても、それを無視し、裏に潜んで活動を続けようとする悪質な密売組織も少なくない。そうした『国を蝕む病巣』を『荒療治』するのが、PSB所属の暗殺者たちの任務である。
ジェシスは、狙撃手となってすでに四年。その間、暗殺者として請け負った仕事をしくじったことはない。
にもかかわらず、特に親しい人々から『不適任である』との見方をされているのは――彼が暗殺に従事し始めた途端、さまざまな体調不良に悩まされるようになったからだ。
具体的には、夜間の不眠、頭痛、食欲不振、突発的な嘔吐感など。これらの症状の原因は精神的な負荷
『表層意識では納得していても、深層心理が殺人という行為を拒絶している』せいだと。
そんなことを言われたところで、ジェシスは困るだけだった。深層心理は自分でも制御できないから深層と言うのであって、どうしようもないし、自分は暗殺者
(……仕方ねえな。この際、言っちまうか……)
やや硬い表情をこちらに向けている少女を見て、ジェシスは決心した。
頭
「人を殺すと、俺の身体が不調を訴
この先を本当に言ってしまっていいものかどうか、一瞬、逡巡
ひと呼吸置いてから、言
「もともと俺には、暗殺者になるだけの理由が……強力な動機があった」
「動機……?」
「銃って代物
思い切って告げると、ソフィシエは瞠目
「……!? いきなり何なの? そんなの、全くの初耳よ?」
「初耳で当然だ。両親の死に様
「どういうことなの? 銃が仇って……あなたの親は、銃で撃
「……まあな。それ以上は訊かないでくれ。話すと長……くはならねえと思うが、かなりくだらねえし、ひたすらつまらねえ。だいたい、今こんな場所で、身の上話なんぞしたくもねえんだよ。朝から気が滅入
突っ込んだ質問をやんわりと拒絶すると、少女は不満げにぼやいた。
「まったく、あなたにしてもピアスにしても、みんな秘密主義者なんだから……!」
ジェシスは、曖昧
「別に……秘密って言うほど大仰
親の仇
『売国
自分が、ある面で身勝手な罪人であることを、ジェシスは少女に白状したのだ。
「まあ、要するに、左脚の後遺症は、むしろ都合のいいきっかけだったんだ。俺が暗殺者
「自分自身の『選択』。だから、銃を取ったのは断じてわたしのせいじゃないし、不本意に人殺しを続けてるわけでもない。あなたはあくまで、そう言い張りたいのね?」
ソフィシエは、ジェシスの口から出るはずの台詞を、ほぼ完璧に先
「でも、銃を憎んでるのに銃を取るなんて、それは……」
呟くように言いかけて、途中で口を噤
「いえ……いいわ。嘘が苦手なあなたの言うことだから、納得してあげる。この話題は、もうおしまいね」
含みのない、無垢
そのとき、少女の横顔が、明るい光に照らされて輝いた。
ジェシスは一瞬、思わず見惚
紅
「綺麗……。昨日、月
ソフィシエは、どこか淋
朝焼けの色にも似た朱
「……そういや、俺、普通の荷物は、全部飯店に置いてきちまったんだよな。自分のも、おまえのも、クレバーたちに買った土産
一応、常識として、現金の入った財
「じゃあ、天華の品物で、持ってこれたのは……わたしの着てるドレスと、これだけってことね」
言いながら、ソフィシエは首筋
それは、百
「そのペンダント……つけてたのか」
「ねえ、ジェシス。あなたが少しだけ自分の秘密を明かしてくれたから、そのお返しに、わたしもあなたにちょっとした秘密をさらしてもいいわ。教えて欲しい?」
突然の申し出に、ジェシスは多少、戸
「おまえの、秘密……?」
だが、好奇心を刺激され、聞きたいという欲求は抑
ソフィシエは、ジェシスの前に来て膝
それに応じて、彼は身をかがめ、相手に顔を近づけた。
――すると。
不意に伸ばされた繊手
「……!?」
次の瞬間、少女の唇が、ジェシスのそれに重ねられた。
愕然
やがてソフィシエは顔を離し、小さく口の端
「……クレバーくんとはまた違うけど、悪くない味」
あどけない容貌の少女は、妖
「だ、騙
甲板に手を突いて、完全にへたり込んだジェシスは、呻
表面が触れ合うだけの軽い口
「騙してなんかないわ。見て……」
ソフィシエは、くす、と笑うと、閉じていた両目を開
「……!」
ジェシスは息を詰めた。
「普段は、妖術を応用した自己暗示で左目と色をそろえてるけど……これが真の右目……妖魔の瞳
翡
上質の蜂蜜
「瞳と同じ色の琥
「いや……」
クラウである彼女が、色違いの瞳の持ち主
ずっと見つめていたくなるような、至宝のような煌
しかし、心身を侵
数瞬後、少女に視線を戻すと、その瞳はすでに翡翠色に戻っていた。
「何も知らずに、これを選んだのね。やっぱり……あなたの直感は並外
感嘆
『あなたは直感に優れているからこそ、私の素性に疑いを抱かず、警戒しなかったのかもしれない。なぜなら……』
自分やソフィシエのことを、心から好きだと言ってくれた娘の顔が、脳裏を過
ジェシスは、おもむろに口を開いて、目の前の少女に告げた。
「……誰もが認める
こんな言葉は、ソフィシエにとって気休めにしかならないだろうが、言わずにはいられなかった。実際に、自分は今、そう感じたのだから。
「……そういうのは、直感っていうより、単なる希望的観測なんじゃない?」
わずかに目を見張った後、ソフィシエは、ごく冷静な反応をした。
ただ――
「でもまあ、あなたの勘
そう呟
ソフィシエの年
瞼
「遥か遠い未来に、どんなに儚い希望しかなくても……そこまで辿
これからも、自分の意思で、自分の身近にいる大事な存在と、自分たちの暮らす母国を守ること。
それが、自分の純粋な望みだ。
影の兵士としても、一人の人間としても、再確認する。
このような望みを、この世に生きる多くの者たちが抱
今もどこかの影の戦場では、光を賭
ソフィシエ・シェスタと李春明も、紛
しかし、たまには日常の戦いを忘れて、平和な非日常に身を委
どんな人間の心にも在
もはや否応
瞼を貫いて差し込む陽光を、いつになく温かく、貴重なものに感じながら。