あとがき
第一夜『ロマンティスト×リアリスト』はいかがだったでしょうか? わたしに
とって、恋愛をメインにして書く初めての物語です。世界観は『休息一下』と同一ですが、時間軸は
ずれています。この物語は、『休息一下』より遡ること約20年前に起きた出来事です。
こういうノリの話は、主人公ローゼンのごとく苦手な方もいると思いますが、
わたしは嫌いではありません。読んだ冊数は多くないけど、一時期外国のロマンス小説にハマっていた
こともあるし。その影響が今回の物語には濃く出ている気がします。
しかし、正統派ロマンスと言うには、あまりにも青臭い雰囲気の話に
なりました。青臭いロマンス……。主役の二人が青春真っただ中の青いお年頃なので、まあ仕方ないです。
今回の物語の大きな特徴のひとつは、極めて少ない材料でできていること
です。メイン材料は、少年一人、少女一人、部屋一個。それだけ。後は、小道具・脇役各少々。中編小説としては、
かなり少なめだと思います。中心は、主役二人の青い心理描写。二人とも魔術大国のエリート魔術士なのに、
一回も魔術を使いやしねえ、という、いろいろな意味で奇天烈な話ではあります。一応、純愛系
ラブストーリーを書いたつもりなんですが。
作者としての最大の反省点は、設定の説明を、うまくストーリーに絡めて
織り交ぜられなかったこと。一部、長々と説明が続く箇所があります。これは話のテンポを悪化させるため、
昔から改善せねばと思っている点です。それで、いっそばっさりカットしようかとも考えたのですが、
結局残しました。連作の起点となる物語として、設定を含ませることが重要だったから
です。うわー言い訳だぁー全然進歩してねぇよ(泣)。
今回の物語から派生する物語は、実は複数あります。ざっと挙げて
三つ。一つ目は、『満ち欠ける娘』マリアベルの話。二つ目は、ローゼンとメイリーズの間に生まれた娘が
活躍する話。三つ目は、今回ローゼンが起こした行動の結果が反映される話。連作としてのシリーズ第二作は、三つ目の話になります。
と、いうわけで、『恋人未満たちの初夜』シリーズ、もし書けたなら、次回はサーヴェクトの
花街を舞台にした大人の男女の話、その次はサーヴェクトの城を舞台にしたコメディ色の強い話になる予定です。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。毎度のお願い
ですが、よろしければ忌憚のない感想をお寄せください。
2004年9月26日 (2006年2月4日一部改変)
最近、笑えるコメディを書いてみたい衝動に駆られている作者 沙月円